ARTISAN 4. 漆琳堂(越前漆器 / 漆器 / 福井県)

ARTISAN 4. 漆琳堂(越前漆器 / 漆器 / 福井県)

福井県鯖江市西袋町にある越前漆器の漆塗師屋「漆琳堂」。 寛政5年(1793年)の創業以来、漆の塗師屋として越前漆器づくりを営み続け、現在で八代目となります。その伝統、技術、そして漆器に対する想いを今日まで脈々と継承してきました。

 

工房と直営店が一体となった漆琳堂のファクトリーショップ。漆琳堂のある越前鯖江エリアでは、多数の工芸の工房が一般開放されるイベントRENEWが開催されている、2024年で10年目。この日はRENEWが開催されており、漆琳堂はその中でも人気の高い工房。

 

福井市から国道8号線を車で走らせ、途中左に折れ直進していく。だんだん左右に田んぼが広がってゆく。自然豊かな小さい山々にも近づいてゆく。さらに進むと河和田(かわだ)という地域に到着する。ここは福井県内で最も漆芸が盛んな地域であり、「漆琳堂」はここにある。

 

自然が豊かな河和田町。

 

西暦1500年ごろ、越前(現在の福井県嶺北地方)は、日本最古の漆器産地としてから漆器生産を開始しました。その発展の背景の一つに、北陸地方独特の気候が漆の特性に合致したことが挙げられます。日本海側の北陸地方は冬季は曇り空が多いことが特徴であり、グレーの空の下に広がる綺麗な雪景色をみると「冬の北陸にきた」と感じさせてくれる。そういった気候に加えて、河和田地区の地域性が上手く漆の特性にマッチしたのでした。

ススキが美しい秋の河和田。四季を感じることができる地。
 

日本最古の漆器の産地、越前。この地で漆器づくりが長く受け継がれてきたのは
湿潤で曇天の多い気候とともに、縁戚や地縁による細かな分業制が構築されたことに拠ります。

漆の樹液を採取する漆掻き職人。木を刳(く)る木地師。木地の強度を高める下地師。漆器を艶やかに仕上げる塗師。蒔絵を器に施す蒔絵師。このような職人技の結晶が越前漆器なのです。

漆琳堂は寛政5年(1793年)の創業以来、漆の塗師屋として越前漆器づくりを営み続け、その技術を今日まで継承してきました。

塗りの部屋。

 

漆の部屋。商品ごとに色の調合が行われている、その種類は実にたくさんある。

 

越前漆器は伝統工芸品であると同時に、日々の暮らしで使われる生活道具でもあります。美しさと堅牢さを兼ね備える漆器をいっさいの手間を惜しむことなくつくり続ける。それが漆琳堂の永代変わらぬ矜持です。

丁寧な手仕事は次の世代の職人へと紡がれていく。漆琳堂には20〜30代の若手職人さんが多いのも特徴。

 

これまで継承されてきたものを、これからも遺していくこと。それもまた私たちに課せられた使命。あたらしい技術や製法の習得も怠ることなく、日々精進しながら漆器づくりの道を歩んでゆきます。

美を塗る。藝を重ねる。

 

漆琳堂 八代 内田徹 経歴
2009年 自社ブランド「aisomo cosomo」を立ち上げ
2012年 産地最年少で伝統工芸士となる。
2012年 「お椀や うちだ」ブランドをデビュー
2014年 経済産業省「がんばる中小企業300社」に選定
2016年 「漆琳堂直営店」オープン
2016年「aisomo cosomo」が近畿経済産業局クールジャパン商品に選定

 

漆を塗り終えた木地を保管する室(ムロ。産地によっては風呂とも呼ぶ。)。木のタンスのような大きな箱で、中は湿度と温度が調整できる造りとなっている。漆がうまく固まるには、温度と湿度の管理がとても重要。戸を閉めてしっかりと置いておく。
漆の塗師屋として始まった漆琳堂。現八代目当主 内田徹さんはこれまでに数々のブランドを発表し、漆琳堂を牽引してきた。2024年には工房内に木地部屋を新設し、漆琳堂は常に道を歩んでいる。

 

 

  

⬜︎越前漆器とは

福井県鯖江市を代表する伝統的な漆器。越前漆器の起こりは、約1500年の昔にさかのぼり、第26代継体天皇がまだ皇子のころ、こわれた冠の修理を片山集落(現在の福井県鯖江市片山町)の塗師に命じたところ、その見事なできばえに皇子は強く感動。片山集落で漆器づくりを行うよう奨励され、今日の越前漆器の始まりと伝えられています。また、越前には古くからたくさんの漆かき(漆の木にかき傷をつけながら漆液を採集する職人)がおり、最盛期には全国の漆かきの半数を占めたといわれています。日光東照宮を建てるとき、徳川幕府は大量の漆液の採集を越前に命じたとも言われ、その高評価の漆かきの存在も越前漆器の産地形成に大きな役割を果たしています。
越前漆器の特徴は、漆を塗り重ねることで上品かつ艶やかな塗り肌がありつつも、軽さと丈夫さも兼ね備えていること。普段の料理、漆器がさらに美しく美味しく引き立ててくれます。
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